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重大報告 [オリジナル]

皆さんには本当に申し訳ないのですが、多分、このサイトの更新はとてつもなく間が空くものと思われます。現時点でも果てしないとも言えるくらい空いておりますが。
ここから、ホームページへ移行する予定です。ホームページが実用に耐えうるようになってから、リンクを張らせていただきますが、こちらに貼る作品は、おそらく、下書き段階の物になると思われます。と言うのも、ホームページの方にこのページの文章の改訂版を貼るからです。ちなみに、これからは。
アニメの二次創作。
CDアルバムの感想。
この辺りがメインになると思われます。アニメの二次創作は、題名に「機動」がつく作品の二次創作がメインでしょう。
では、サイトの方向が少しばかり蛇行を始めてしまいましたが、これからも宜しく御願いします。


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お詫び。(テストだから) [オリジナル]

ご免なさい……おそらく、あと二週間ほど更新がないと思われます。
テスト……気の遠くなる苦行ですね、やっぱり。


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短編集其の五~候補位置~ [オリジナル]

先のエコノミクスは、ほとぼりが冷めたので封印します。
そして今回投稿するのは……
ハードディスクの奥の方に残っていたアイデアです。
多分、先の作品と螺旋を組んで連なっていくモノと思いますが、どうぞゆるりとご覧下さい。
ですが、少々短いです。

夢って、見る物なんだろうか。それとも、叶える物なのだろうか。
僕なんかが触れていい物なんだろうか。僕なんかが見ていい物なんだろうか。
止めどない僕の思考の螺旋階段。それはこの世に本当にメビウスの輪があるのではないかとすら思わせる。
そのせめぎ合い。僕が懸念するはずもなかった問題は、その僕の行動によって引き起こされた。
僕は、誰もいない夕方の教室で、その外を見るために窓から身を乗り出していた。乾いているけれど、それ相応に気持ちのいい風。二階の教室から下を見れば、楽しそうに談笑しながら帰るこの学校の生徒の姿が目にとまる。
僕だって、ついさっきまでその輪の中にいた。でも、逃げ出した。耐えきれなかった。僕の足下で叱咤の無い笑顔で笑い合う、その少年少女達の純真さに。
僕は彼らのように、何の障害も無しに笑えない。彼らのように真正面から夢と向き合うことも出来ない。
夢を追っていた僕は、あのとき彼女を助けたいと思った。だから自分に持てる全ての力を使って、彼女を助けた。
でも、その彼女はもうここにはいない。
僕が、夢を追い掛けたからだ。
僕は、全てを救う道を求めた。僕なら出来ると思った。僕の手の届く人は、僕がいれば誰だって助けられるって。それだけの力が僕にはあった。でも、僕は彼女だけは救えなかった。
他は僕に救えない物なんて無かった。僕の見えるところにいた人は、全て救えた。
他人が言うには、僕は灯台だった。遠くまで救済の光を運び、救いの港へと導く。
でも、自分で思っても、僕は灯台だった。僕は、一番近くまで近寄ってしまった人を救えなかった。
あの日のことは、ずっと忘れられない。


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ブロークン・ハート~共謀~ [オリジナル]

こんにちは。いや、こんばんはかも知れないし、おはようございますかも知れないけれど。
奈良上介です。
先日、ついに一万ヒットを突破しました。めでたい!
でも、めでたいにもかかわらず、相変わらず文は短い……
前回が短かったからなのか、それともひらめきが悪いのか、はたまた限界か……
めでたい記念に何か長いのおとそうかなとも思いましたが、完結ストックが一つもないのが現状……いつの間にか減りました。




当然、俺のハンドルと本名は別物だ。足がつくから、本名は言わない。
だから、見ただけで俺のハンドルが分かるというのはおかしい。可能性と言ったら一つぐらいしかないのだが……
それに巡り会う確率は限りなく低く、これまで相手にもしてこなかった。
だが、現に巡り会った。過去の依頼人に。
そして、この笑み。この背筋の寒さ。
一番無理難題を押しつけた依頼人ではなかったか。
パスワードが分かったのをいいことに、いっぺんに自衛隊の基地を連続で三つほど爆破する依頼をされたような覚えがある。
確かあのときは、俺の大きい方のパソコンを使って二つの基地は対空ミサイルの誤爆で片付けたのだけど、困ったことに最後の一つが海軍基地で、しかも某国の管轄。
俺は、結局侵入して爆破する羽目になった。ああ、あのときは苦労した。
で、その苦労がまた、繰り返されようとしているのだ。
だが、報酬ははずんだことを思い出し、仕方なく腰を下ろす。
「で、依頼は何ですか」
俺が望みを聞いてやると、依頼人は笑った。
「あははっ、私まだそんなこと言って無いのにっ!」
まあ、向こうも分かってやっているのだから華麗にスルーするべきだ。
「用件を……」
「ああ、私、依頼を五つぐらい持ってきてるの」
彼女がそう言って取り出した、契約書。
そこには、確かに俺の実行できる五つの願いが書かれていた。
「何でだよ……」
俺は問いかけた。その問いに、彼女はあっさりと答えてくれた。
「だって、いいビジネスじゃない! あなたは報酬が弾み、私はお金を手に入れる」
冷静になって、依頼人の顔や全身を見る。
とりあえず、顔立ちは高校二年、と言うところだろうか。まず、ここにいてはいけない人物だ。見た目は。
で、体つきは……これもまた高二ぐらい。ビジネスだの何だの話す年ではないと思うのだが。
折角なので、ついでに聞いてみた。
「何歳?」
「十七よ。文句ある?」
大あり。でも、言ったら殺されそうな気がしたので黙っておく。
「まあ、いいでしょ? 今は共謀罪が通ろうとしているんだから」
今の国会で、共謀罪が本格的な審議に入り、国会を通過しようとしている。
もし通過してしまえば、俺の掲示板、ブロークン・ハートの依頼者達は全員が検挙されてしまうだろう。
だが、俺はそれでも破壊を求めるモノのために戦う。そのための力、そのための俺だから。
その助けになるなら、実は誰でも良かった。
俺は、意を決して、口を開く。それは、二度と戻れぬ道。
冗談で済んだかも知れない俺の行動が、ついに現実となるのだ。
でも、それを恐れてはいられない。
俺から破壊を取ったら、本当に何も残らないのだから。
「分かった。これから宜しく」
妙に決断の早かった俺に戸惑いつつも、彼女も俺の手を握りかえしてくれた。
「こちらこそ、宜しく」


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ブロークン・ハート~伏線~ [オリジナル]

ああ、困った。
これじゃ短すぎる。
でも、次のは努力して間隔縮めますので、堪忍下さい。
また、ここできっておかないと切り悪いので。




「先日午前二時頃、奈良県立春日高校にて爆破事件があり、春日高校の職員室が爆発によって破壊されました。原因は不明ですが、春日高校は生徒の安全のため、安全が保障されるまで学校を閉鎖する旨を会見で発表しました」
大していつもと変わらない、大学のロビー。そこのテレビは、最近よく起こるテロリストの事件を報道していた。
「この事件も、犯人につながる手がかりが一つもないため、一連の連続テロ事件と同一犯であると思われます」
アナウンサーは、何も分かっていないといった風な感じで俺のお膳立てした原稿を読み上げる。毎月一度は俺の起こした事件が新聞の一面を飾る。それはそれで面白い物だ。
「なあ、ホント物騒だよな?」
俺の隣でカツサンドを食べていた奴が、俺に話しかけてくる。俺の友人、真原祐二。
こいつにとっては昼飯なんかよりも、今世間を賑わす怪事件の真相究明の方がよっぽど重要らしい。勿論、尻尾の欠片も掴ませはしないが。
「まあ、そうだな」
この事件の裏に俺がいること、そしてもう一つの裏があることを、こいつは知っているのだろうか。
「……本日、国会で、ガソリン税から防衛費を拠出するための法案が可決されました」
またどうでもいいニュースに戻る。真原の注意も、当然カツサンドに戻る。
「うーん、やっぱりうまいっ!」
やっぱり、昼飯というモノは人間にとって最も重要なことの一つらしい。
「ところでさ……」
祐二は急に言い出す。俺は、いつでもかわせるように身構える。
「今日、暇? 組んどいたんだけどさ」
肩すかしを食らって、気付かれないように胸をなで下ろす。そうだ。よく考えれば。
祐二の関心は、ずっとそれだったっけな。


「カンパーイ!」
居酒屋一杯に鳴り響くハイテンションな声。何でこういう事はここでやるのか疑問に思った奴は多いだろう。現に、俺も疑問だ。
まあ、俺は幾ら飲んでも酔わない。いつものようにジョッキを易々と飲み干す。顔一つ赤くしない俺を見て、驚きを隠せない皆さん。
その俺の隣では、同じ事に挑戦して顔が真っ赤になっている祐二がいる。かわいそうだと言えばかわいそうだ。
実は、この席、紅一点だ。
男は俺達二人。
女は一人。
何かがおかしい。間違いなく、俺は人数あわせじゃなく、増援で呼ばれてる。
「なあ、ちょっとこっちに来てくれ、弘幸」
そう言われて、俺は仕方なく祐二についていく。仕方ない。友人の頼みとあらば断らないのが礼儀って言うモノだ。
「頼むからさ……べろんべろんに酔ったら止めてくれな」
「……」
なんだそれは。当然のことを何故頼む。
「いや、気にしないでくれよ。ちょっと心配だっただけだからさ」
何が、と聞く隙は俺には与えられない。
まあ、大方暴走しないか心配だったんだろう。多分、これは奴にとっては大一番だ。本当は、俺を連れてきている時点でアウトなのだが。
そんなことはさておき、俺達は席に戻る。
そこには、もう酔っぱらって寝ている女子一名の姿があった。
「俺は知らないぞ」
「……」
いや、ちょっと待て、それはないと思うのだが……
間違いなく、席に着いた途端、祐二も眠り込んでいた。おかしい。ここには催眠ガスでも充満しているのだろうか。
「なら俺も寝てるはずだから、おかしいよな」
俺に運ぶ力もない。だから、店主を呼ぼうとしたとき、
足を、寝ていたはずの女子に掴まれた。その口から発せられた言葉に、俺は耳を疑った。
「北山管理人、ですよね?」
その言葉に、見たことがあるような顔に、探していた物を見つけたような笑みに、背筋が、ぞくっと震えた。


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ブロークン・ハート~壊れた心~ [オリジナル]

言ってることとやることが全然違う、管理人です。まさか、あの長編が書けなくなるとは思いませんでした。やっぱりあちらは向いていないんでしょうか……
では、設定共有の短編集を始めます。これならば、ネタが尽きないことを祈ります。
これは当然、フィクションです。


他人が作った物を壊すというのは男のロマンという奴である。
でもって、それが俺は大好きだ。
壊すというのは、限りなく俺の高ぶりを頂点に近づけ、俺の世の中に対する欲求不満を全て解放してくれる。
さて、今日は何を壊すことにしようかな……

朝。普通の空の綺麗な、気持ちのいい朝だ。もっとも、今は空など見えていないが。
俺はのんびりとベッドから身を起こす。シーツはくしゃくしゃ。今日も副作用に見舞われたわけだ。
俺の部屋は何の変哲もないワンルームマンション。そして俺は少し普通の大学生
俺の部屋のほとんどはベッドと巨大なパソコンで占められ、机が一つあるくらいである。
また、台所には邪魔な物は置かないようにしている。ユニットバスにもだ。だから、俺の生活スペースはほとんど台所周辺かベッドの上だと思っていただければよい。
俺の枕元では、一日中動くことをやめないレッツノートが冷却ファンを何事もないかのように回し続ける。ノートパソコンらしくない事に、後ろから情けなく電源コードが出ている。勿論、巨大なパソコンとは別物だ。
俺はそのレッツノートの上ぶたを開き、画面をあらわにした。
そこに写るは、俺のサイトの名前だ。ネット上では少しばかり有名なサイト、「ブロークン・ハート」だ。
一度は週刊誌に取り上げられたこともある。あくまで、新聞ではなく週刊誌と言うところがミソである。地元に根付く優良サイトというわけではない。むしろ極悪だ。
俺は管理者画面から今日の書き込みをチェックする。そして、ちゃんとパスワードを打ち込んだ投稿者を捜す。
「うん? やっぱり最近は簡単だな。ここのところ人間がらみがないから楽だな」
そこには、こう書いてあったのだ。
「私の行っている春日高校の職員室をこわしてください。御願いします。メサイアさん」
俺はその言葉を読むと、まずその投稿者のメルアドに返信をする。
「承りました。ブロークン・ハートの名にかけて、その命を執行いたしましょう。ついては、執行に必要な情報を提供願いたい……」
俺は大量に取ったフリーメールアドレスを使う。ありもしない住所のフリーメールアドレスを使って、他の所のを大量に取った。幾ら頑張っても、足はつかない。メールを送るパソコンは、メールアドレスを取ったパソコンとは違うし、何よりそのパソコンにIPアドレスは存在しない。存在するのは、世界中の人間が容疑者になる可能性だけだ。
俺はメールが送られたのを確認すると、いつも机の前に置いている通学用の鞄の中にレッツノートを詰め込む。
そして、いつも机の上に置いているマリービスケットを口の中に放り込む。朝飯はいつもこれだ。
そして俺はビスケットを食べ終わると部屋のベッドの下に隠した薬品瓶を三つほど持って、今日もいつもと同じように部屋を出た。

大学の授業は、風のように通り過ぎていって、今俺は車の中にいる。
俺の車はプリウス。こいつの燃費は素晴らしい。お陰で依頼を安価に仕上げられる。
俺は大学四年で、もう就職先も決まっている。あるパソコン会社で、在宅プログラミングの仕事を貰うことになった。当然、もし単位不認定が出れば中退である。それでも拾って貰うという契約をしている。
俺のパソコンなら、そんなプログラミングは一瞬。他のことにうつつを抜かしていようと、たまに会社にプログラムを持って行くぐらいのことをすれば誰も文句を言わず、給料も入ってくる。これほど俺の使命上都合のいいことはない。
俺のプリウスのナビには、ある地点が打ち込まれている。
例の依頼主が指定した、待ち合わせポイントだ。
俺はそれが近づいてきたのを見て、百キロほど出していた車のスピードを落とす。
ブレーキがきき切ったとき、俺の耳にナビの声が届いた。
俺は車から降りて、車の荷台に寄りかかりながら依頼主を待つ。
「あの……管理人さん、ですか?」
暫くして、背後から声がかかる。振り向いてみれば、そこには紅葉した銀杏の葉と、同じように紅潮した顔の女子が立っていた。
興奮しているのかも知れない。いつも、俺が女子のクライアントに依頼を受けるとこうだ。成功した後のことを考えて興奮するのは大いに結構だが、一応犯罪なんだからな?
そんな考えは頭の隅に追いやり、俺はいつもの優しい声で彼女に声を掛ける。
「こんにちは。私がサイトの管理人です。以後、北山とお呼び下さい」
「……私は原田です。宜しく御願いします」
「では原田さん」
「何ですか?」
俺は彼女の不思議そうな顔に、ちょっとした危機感を覚えた。だがそれをすぐに表情に出さないように消し去り、俺はいつものように聞く。
「例の物、教えていただけますかな?」
その声に、誇らしげに笑って原田は俺に一枚のメモ用紙を差し出す。
「メモじゃないと困るんでしょ?」
その通りだ。今回、これも使うからな。
そこに書かれていたことさえあれば、十分だった。
「後は、報酬だが……」
俺は小さく、原田の耳元でささやく。彼女は、小さな声で俺に返した。
「学年みんなが協力してくれるから、十万円はいけると思います」
「分かった」
元は取れることは確実になった。爆破依頼はこれで百二十五度目だが、何故かいつも国家がらみだ。
しかも、いつもその後は大ニュースになって、俺の知らない奴が捕まる。
そして、俺は毎回、依頼主に何か凝った名前で犯行予告をして貰っている。そうすれば、全ての事件の犯人は違う犯人だと言うことで片付けられるから。
今回は無記名だそうだが。
そしてそれを、今日学校はスルーしたらしい。好都合だ。使うのは学校の備品、それに少しだけ持参の薬品を。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
俺は彼女をプリウスの中に誘い、彼女を助手席に乗せると走り出した。
彼女の言う春日高校に向かって。
日は、もう完全に落ちていた。

不用心だな……
俺は心の中でそう思った。不用意な声を上げるのはタブーなので、口に出しはしなかったが。
俺の目の前には、鍵のかかっていない体育倉庫があった。とは言っても、よくホームセンターで売っている物置のような物だが。
その中には、何処にでもある線引きと、後一つ。今回使うとても重要な物があった。
俺はそれを三つほど担ぎ上げ、ほど近いところにある職員室に向かった。職員室の中には、誰もいない。もう十一時だ。当然だろう。警備員も、この時間の当番の者は定期的な見回りしかしていないはずだ。だから、その時間と道順も調べて貰ってある。完璧だ。
「じゃあ、始めますか」
後必要なのは、俺のリュックの中に入った三種類の薬品だけだ。二つは薬品ではないのだけれどね。

ブロークン・ハート掲示板のルール

一、管理人(以下私)は、あなた方の破壊依頼を請け負います。一週間に一件、私の目にとまった物を実行します。
二、人間関係の破壊も請け負います。三角関係が鬱陶しい、とかならどうぞ。ただし、想い人が自殺しても私は責任を負いかねます。
三、依頼していただくにはパスワードが必要です。私からお教えすることはありませんので、自分で見つけ出していただきますよう、宜しく御願いいたします。
四、私が受けることにした依頼の依頼主様には、直接メールを送らせていただきます。なので、書き込み欄のメールアドレスはきちんと記入しておいてください。
また、メールは管理人しか送ることが出来ない仕様なので、迷惑メールが届くことはございません。
五、私が依頼に成功しても、ネット上の共有スペースへの書き込みはしないで下さい。守っていただけないと、それ以降、私がまともに活動できなくなります。
発見し次第、その依頼主を最優先破壊対象とします。

上記のルールを遵守していただき、清く正しい人生を送っていただけることを祈っております。
管理人 北山弘幸


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短編集其の四~片道切符の行き先~其の二~ [オリジナル]

先週の続きです。来週から復活しますので、ご了承下さい。

二ヶ月後のある日。

あの日も、いつものように彼女が迎えに来るはずだった。だが、俺は、生まれて初めて寝坊した。
学校が始まり、二時間目の休み時間の頃に、俺は起きてきた。
彼女の携帯から、あるメールが送られてきたからだ。
そのメールに、題名はなかった。
ただ、「たすけて」と書いてあるだけのメールだった。
リビングの壁に掛けてある赤い縁のアナログ時計を見たとき、俺の顔から血の気が引いた。
そんな俺の顔を見て、今の時間の家の主は言った。
「普通に学校行ったならこんな早くに知らずに済んだのにね…」
俺は、その時、母さんの言っている言葉の意味が全く分からなかった。母さんは、海よりも深く落ち込んだ様子で続ける。
「司ちゃん、緊急入院だって」
その「緊急」という単語の響きと、さっき彼女から送られてきたメールの意味に、俺の心臓は凍り付いた。耳は遠くなり、視界がじんわりとぼやけ始める。
「今の医学でも、全然原因の分からない病気らしくて、余命は長くても二日…」
俺は着込んだ制服のまま、何も食べずに、玄関のドアを開いた。
後ろから呼ぶ声も耳に入れず、母さんの自転車にまたがり、力の限り進んだ。
途中、パトロール中の警察官に注意されそうになったが、全速力で振り切った。
そして、俺は彼女の入院している病院にたどり着いた。
自動ドアの開くまでの時間すら長く感じながら、面会受付に滑り込む。
並んでいた人達を押しのけ、白い服を着た看護婦のところにたどり着く。
「木田司の病室は、何処ですか?」
俺の焦った声を聞いたのか聞いていないのか、小さな小窓から覗く老看護士の顔は冷静そのものだった。
「順番に並んでください。そうでないと面会許可は出来ません」
俺は、生まれて初めて、彼女の前と母親の前以外で涙を流した。
「だから…司の病室はどこかって聞いてんだよっ!」
俺が初めて赤の他人の前で見せる涙が、大理石の受付を濡らし、うっすらと頬に線を引く。
「ICUです。親族の方以外は入れられません」
その「ICU」という言葉に、俺は更に衝撃を受けた。この一瞬まで、母さんの悪い冗談で、ただ風邪を引いているだけだと思っていたのに、それが見事に崩れ去った瞬間だった。
俺は、震える声を必死に安定させて、窓の向こうにある彼女との連絡口に向かって言った。そうしないと会えないとばかりに。
「司に、戸高良祐が来たっていってくれ!頼む!」
老看護士は、後ろの部下にこういった。
「三階のナースステーションに連絡。ICU患者に戸高良祐の入室を許可するか聞いて」
俺の顔は、いくらか安堵の表情になったはずだ。それを見て、老看護士は言った。
「ハイ、次の方。ご迷惑をおかけしました」
俺は素直に、受付の前から退いた。

俺は、病院の青い椅子に座って、誰かが俺の名前を呼んでくれるのを待っていた。
院内アナウンスは、番号しか呟いていない。
ふと、その単調な番号の羅列の中に、人の名前が入る。
「戸高良祐様、今すぐ外来受付までお越し下さい」
その後の俺の表情は、傍目から見ればまるでお年玉を貰った子供のように見えただろう。
俺は、受付でまさしくお年玉のような大きさの物を貰った。
そのお年玉には、こう書かれていた。
「ICU 入室許可カード」

殺風景な、テレビどころか花瓶もない、そんな病室。
それが、彼女のいるICU…集中治療室だった。
テレビの代わりに並ぶのは、波線しか写さないモニター達。
花瓶の代わりに並ぶのは、トレイの上で山となった点滴の袋。
彼女は、点滴を左腕に受けてベッドに横たわっていた。
俺が入ってくるのを見て、彼女はにっこり微笑んでこちらを向いて、体を起こした。俺は急いで彼女に近寄り、彼女が体を起こしていられるように背中に左腕を通した。
彼女は、儚く笑ってこういった。
「何で私、こんな所にいるんだろう?歩くとちょっとふらっとして、その場にへたれ込んじゃうだけなのに…」
彼女の目は、泣いていた。医者よりも誰よりも、自分の体のことは自分が一番よく分かっているはずだ。死に至る病なら尚更。
俺は、ただ彼女の右手を握りしめてあげることぐらいしかできなかった。
そんな俺に、彼女は潤んだ目で俺の目を見ながらいった。
「ねえ、私ってどうなっちゃうの?」
「死んじゃうよ」なんて、口が裂けても言えない。幾ら考えても、彼女を励ますこの出来る魔法の言葉は思い浮かばない。
俺は、耐えきれなくなって彼女の右手を握っていた右手を彼女の体の左側から背中に回した。
そうしないと自分が押しつぶされそうで、そうしないと彼女が余りにも寂しそうで。
彼女の吐息が、俺の首筋にかかる。やっぱり、息は苦しそうだった。俺は、彼女の耳元に限りなく近づいた口で、彼女の方を向かずに言った。
「俺も、分からないよ…」
彼女も、俺の耳に息がかからないように言った。
「私は、分かってるよ…だから良祐、これからも毎日、会いに来てね?今度から、私を起こすのは良祐の仕事!」
わざと明るく振る舞う彼女は、やはり今にも消えそうな笑みを浮かべていたのだろう。
俺はその見えないはずの笑みに消えて欲しくなくて、彼女の耳に向かって言おうとした。
「…」
だけれど、言葉にならない。そんな俺に、彼女は消え入るような声で言った。
「もう最後だから、私のわがまま、許して欲しいな…」
俺の目から、涙が堰を切ったように溢れ始める。震える声で、俺は彼女にああ言ったと思う。
「最後なんて、最後なんて…俺は、そんなの…」
「…」
彼女からは、何も返ってこなかった。
「…俺はそんなの、絶対に嫌だっ!俺は…」
そこで、彼女は泣き出してしまった。泣き出した彼女にびっくりして、俺の方は喋るのを止めてしまった。
彼女は、涙に濡れた声で、こういった。
「ありがとう、良祐…」
それが、俺の聞いた、最後の彼女の言葉だった。

その後すぐ、彼女は俺の腕の中で、息をするのを永遠に止めた。
その後何度も、何故気付いてあげられなかったのかと自分を責めた。
 すぐに俺は、親族でないからと言う理由で最後の別れを告げさせられた。でも、そんな急にいなくなって、俺が心の準備をしているはずがない。言葉は、一句たりとも出てこなかった。ただ、泣くことしかできなかった。
 結局最後の別れすら何も言うことが出来ずに、俺は彼女の傍から引き離された。もう学校も終わろうという時間なのに、俺はずっと病院の待合室の青い椅子の上で俯いていた。俺は、彼女にしたことの一つ一つを後悔した。
 何故、一回も彼女を起こしに行ってあげなかったのか。
 何故、告白の言葉を自分の口から言えなかったのだろうか。
 何故、何故…
 その「何故」という疑問の一つ一つが、涙という回答を得て、俺の制服の黒いスラックスにぽつぽつと更に黒い部分を作る。
 俺の世界は、その日から涙でにじんで見えなくなった。

彼女の葬式の時には、止めどなく流れる涙に終わりなど無かった。
それ以降の俺の生活は、苦痛でしかなかった。
授業には出席する気も起こらず、テレビの平和なコメディードラマにすら嫉妬し、彼女のことを思い出すたびに、一緒にいたいという叶わぬ気持ちはふくれあがるばかり。
俺は、本気で死のうと思った。彼女のいない生活は、生活ですらなかった。ただの「経過」に過ぎなかった。
だから俺は、夏休みの親のいない日に、携帯を机の上に置いて、青酸カリを溶かしたコーヒーを目の前に置いた。
彼女はコーヒーが好きだったから、俺も一緒に飲む内に好きになった。最期に飲む飲み物として、これ以上の物はなかった。
そして、コーヒーに口をつけようとしたとき…
俺の携帯が鳴った。何かの縁と思い、そのメールに返信してからコーヒーを飲むことにした。
俺は、携帯を開いて、受信メールボックスを見た。そこは、彼女からの最後のメール以来、誰のメールも入っていなかった。俺は、最新のメールボックスを見た。そこには、さっき着信したメールが入っているはずである。
そこには、「2006年、八月七日」という題名のメールがあった。そして、そのメールの差出人は…

俺はそれを見たとき、嘘だと思った。死んだはずの彼女のパソコンのメルアドから送られてきているのである。
何かのいたずらだと思ったが、興味の方がそれを上回った。
そのメールの本文は、こうだった。
良祐、元気?今日は私達の告白記念日だよ!忘れてないよね?
と言うことで、私のお墓の前に私の大好物、良祐の作ったシフォンケーキを供えてね。
御願い!

追伸…

そこからは、視界がにじんで読めなかった。
暫くしてから読むと、彼女が今も生きているかのような文。そして、これからも俺達の何かの記念日の時にメールが届くと言うことが書かれていた。
パソコンが好きだった彼女のことだから、何らかの方法を使って、時間差で届くようにしたのだろう。
俺は、目の前にあったコーヒーを、全開だった窓の外に放り投げた。

それからも、俺は、彼女のからのメールを楽しみに生きている。返信の内容によって彼女のメールの内容が変わることはないと分かっていても、俺は彼女に誇れる返信が出来るように、必死で努力した。今は、世界的に有名なミュージシャンになっている。これも彼女のお陰である。
そして、彼女のメールには、必ずある一文が含まれている。それは、俺が…何よりも大切に思っていることだ。
「私のこと、永遠に忘れないでね!」


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短編集其の四~片道切符の行き先~其の一~ [オリジナル]

明けましておめでとうございます。今年も宜しく御願いします。
新年早々ご免なさい。本編の続きが出来上がってません。
ということで、昔書いたのを一つ。
応募用のですが、個人的にあぶれたのでこちらへ。かといって長く書けないだけであって、自分の中では悪くないものです。
ラストが無理矢理で、そこに持って行くのも無理矢理なので個人的にあぶれたのですが、どうなんでしょうねえ……
今の表現で改訂してもいいのですが、ちょっとこの頃の感情を忘れてそうなので、やめておきました。

「ねえ、何で携帯変えないの?お金一杯稼いでるのに」
俺のお袋が、何か不思議な物を見るような目で俺の二世代前の携帯を見つめている。
「ああ、これ?」
俺はわざとらしく、お袋の目の前にその傷だらけの携帯電話を掲げて見せた。
「俺が何でこんな年になっても誰ともお見合いとかしようとしないのか、知ってるんだろ?」
その言葉にお袋は、急に言葉に力をなくして、目に浮かんだ涙をぬぐい始めた。
「ごめん、ごめんね…良祐…」
そうやって泣き続けるお袋の肩をそっと抱えて、俺は、過ぎ去ったはずの過去のことに思いを馳せた…

「おはよう!良祐」
彼女は、いつも太陽のように明るい笑顔で、俺の顔を赤く照らしてくれた。
「あと十分だけ寝かせてくれ…眠い…」
俺はその笑顔がまぶしくて、いつも一瞬だけ逃げてしまった。でも、その太陽は夜が来る事なんて許してくれやしない。
「だめっ!もうあと三分で出ないとバスに乗り遅れるよ!」
そう言われて渋々役に立たない目覚まし機能付き電波時計を見ると、確かに、バスの出る五分前だった。俺はあわててベッドを飛び出し、彼女のいる自分の部屋の中で、制服を箪笥から出してきて着替え始めた。彼女が自分の部屋の中にいるというのに、俺も彼女も、そんなことはちっとも気にしなかった。そして、部屋を出れば、味噌汁を音を立てながらすする父さんと、二人分のインスタントコーヒーをかき混ぜている母さんがいた。
「行ってくる!」
俺は、いつもそうやって、家を出て行こうとする。そして、いつも母さんが俺を捕まえて、こういった。
「何も食べないと体に悪いから、これを食べて行きなさい!」
そう言って、バナナを渡す母さん。それを俺は、三口ぐらいでぺろりと平らげて、玄関のドアを彼女と二人で駆け抜けていった。

息を荒くしながら、俺達はバス停に向かって走る。走りながら、彼女は俺に尋ねてきた。
「ねえ、今日の宿題って何だったっけ?」
俺は、わざと冷たい態度で返した。
「さあ?授業中は司のメールがないときは寝てるから知りません!」
自分の成績が悪いのは分かっている。現に、前期中間試験の時に、俺の親が呼び出しを食らった。それに対し、彼女は成績優秀、容姿端麗、スポーツ万能。スポーツと音楽以外に取り柄のない俺とはえらい違いだ。
そうこうしているうちに、後ろからバスが追いついてくる。
「あ、やべっ!もうバス来た!」
「ええっ?」
焦っているように見えて、彼女の表情は明るい。
「さ、今日も競争。ヨーイ、ドン!」
彼女が走り出すと、俺もまた、笑いながら追いかける。平和な日々の、ほんの一ページ。

授業なんてのは、かなり頑固そうな教師が、黒板に性格そのままの字を書く。そんな物だ。
いつも通り、後ろの方の席に二人で陣取った俺達は、授業中であるにもかかわらず、メールの交換をした。
『やっぱり、円山の授業は眠いな』
そんな短いメールですら、彼女に送る。彼女はそれを見て、遠目にも分かるぐらいにっこり笑って、こう返してくれた。
『良祐にとっては、どんな授業でも眠いでしょ?だって、どれだけ成績悪くても気にしないもんね』
こちらが授業中で声を上げて反論できないのを、よく分かっている。成績のことを言われると俺がどれだけ怒るかも、彼女はよく分かっていた。だから、文の最後にはこう付け足してあった。
『ごめん。放課後、喫茶店でパフェおごるから、許してね』
またいつものように、俺はため息をついたのを覚えている。

放課後、俺達は学校の近くの喫茶店にいた。
俺の親戚のおじさんが経営する「アイムホーム」という喫茶店。
いつものことなので、今日も何も言わずとも、スペシャルパフェとコーヒーが出てきた。スペシャルパフェの器の上では、いつも通りアイスクリームと生クリームが威張り散らし、それにメロンとバナナの輪切りが抵抗していた。
いつものように、俺達は二人で同じパフェを食べる。ここのパフェを二人で食べると結ばれるというジンクスを知ったのは、あのことがあった後だった。
そんな未来のことも、ひょっとすると過ぎたことすら知らないその頃の俺達は、呑気に今日の授業の面白くなさを店主である野崎さんに愚痴りながら、パフェの生クリームの載ったスプーンを持ちながら、ミルクを少しだけ入れたコーヒーをすすっていた。二人で同じものを食べる様を野崎さんが冷やかし、二人で顔を赤くする。
それが、俺にとってかけがえのない、でも失ってみないと分からない、そんな幸せな日々の繰り返しだった。

2005年八月七日。俺にとっては忘れられないはずだった日である。
この日、俺の街では夏祭りがあった。
街の中央通りである東商店街通りを全て車両通行止めにして、歩行者天国にする。両端の店が屋台を出し合い、いつもも活気に満ちあふれる商店街に、子供達やアベック達の活気が加わり、凄まじいまでの力に溢れる。
その中を、俺達二人はたわいもない話をしながら歩いていた。
両端の店は、アベックと子供達であふれかえっている。俺は、早くここから抜け出して、今日の本題に移りたかった。でも、彼女はその俺の希望を打ち砕き、こんなことを言った。
「ねえ、あそこのお好み焼き、食べようよ」
確かに、お好み焼き屋の前のお好み焼き。美味しいに決まっている。今日は気分がいい俺は、彼女の提案に乗ることにした。
やはりお好み焼き屋だけあって、人が多い。三十人ぐらい並んでいる。だが、専門店だけあって、回転は速い。二分後には、熱々のお好み焼きが俺達の手の上に乗っかっていた。人混みのせいか、彼女が少し咳をした。
そんな俺達を道の向こうで手招きする人影があった。
野崎さんである。
俺達は野崎さんに店に入れて貰って、店の中でお好み焼きを食べた。今日は気分がいいとか言って、コーヒーをタダで付けてくれた。
すぐにお好み焼きを食べ終わった俺達は、野崎さんにお礼を言って、その場を離れようとした。
その時、野崎さんが俺を捕まえて言った。
「がんばれよ、良祐君」
「はやく!良祐!あそこのシュークリーム美味しそう!」
聞こえないと思っているのか、いつもよりかなり大きな声で俺の名前を呼ぶ彼女。
俺は、走って彼女のもとへと向かった。野崎さんからの応援を受けて。

俺達が祭りを抜け出し、小さな川を渡る橋にたどり着いたとき、遠くの方で腹に響く音がした。そちらを向けば、色とりどりの花火達が、すっかり暗くなった空を彩る。その時まで俺達は、日が暮れたことには気付きもしなかった。
 その橋の上からは、良く花火が見えた。なのに、俺達二人以外は誰もいない。俺達は白いペンキの塗られた欄干の上に、そこのコンビニで買ってきたオレンジジュースの空き缶をのせた。
 今日、言い出そうと決めていた。だが、やっぱり恥ずかしくて、一言も出てこなかった。彼女は、ずっと花火に見とれている。その横顔は、覗いてはいけない物のように可愛かった。俺は、少し恥ずかしかったが決心した。携帯を開き、たった五文字で出来たメールを彼女の携帯に送った。やっぱり、相手の目を見て話すのは恥ずかしかった。
 花火に見とれていた彼女が、ふと携帯のバイブレーションに気がついて携帯を開く。携帯の液晶画面に映った文字を見た彼女は、きょとんと不思議そうな顔をした。
「え?私たちって付き合ってなかったの?」
と言わんばかりに。でも、その後はにっこりと笑って、こう言ってくれた。
「私も良祐のこと、大好きだよ!」
そして、互いに恥ずかしがりながら近寄って、抱きしめ合った。俺にとって、それは最高の日々の始まりだった。
 空に友と共に華やかに咲いて、刹那の内に散っていく花火達も、その光で俺達を祝福しているように思えた。

其の二に続く。伏線は一本しかありませんが、どうぞお目に見てやってください。


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さよならの旋律~リバース・エンド~ [オリジナル]

今回は、次の夏休み編への導入です。なので、凄く文もいい加減で、展開も思いつきだらけが目立つかも知れませんが、どうぞ宜しく。
メリークリスマス!なのにここは夏休み。あ……
クリスマス特別編を用意すれば良かったな。忘れてた。

「夏休み、ですか?」
僕は学校に存在する当たり前の行事すら忘れていた。
「だって、進学校はそんなの無いはずじゃあ……」
「そりゃ、あなたの行っていた学校はそうだったでしょうけど。ウチは違いますよ」
そう。この話し相手は校長でも同僚の教師でもなく、綿貫さん。
そして僕は、生まれて一度も夏休みという物に出会ったことがない。実は中高一貫校に行っていただけではなく、小学校も有名なところに行っていて、夏休みは一日もなかった。
だから、夏休みは勉強しない人達の祭典だと思っていた。
でも違う。綿貫さん達の話を聞いていると、そうは思えなくなってきた。
「じゃあ先生。夏休みの過ごし方教えてあげますから」
「……御願いします」
実はこの日の朝、用務員室の冷蔵庫の上の神棚が何故か落ちてきて、痛い思いをしたのだった。




「では、夏休み前最後の授業を、これで終わりとします。解散!」
僕は言った。それと同時に、綿貫さん、稚菜とその他大勢の生徒達が僕を取り囲む。
「さ、行きましょう、先生!」
「ちょ……何処へ……」
僕は稚菜に手を引かれて、そのまま学校を出て、どんどんと学校の外を進む。
「僕はまだ仕事が……」
「そんなのはいいの!」
本当は良くないのだが、逃がしてくれそうにないので仕方ない。僕はそのまま手を引かれ、街の喫茶店に入っていった。


「私たちで、クラス全員集合日のスケジュールを組みました。ここにいない面々にも了承させています。御願いします」
「……忙しいなあ」
僕が「リバース・エンド」という喫茶店に入ってまず見せられたのは、みっちり週単位で決められたスケジュールだった。
それには、プールの予定だとか、夏祭りの予定だとか、花火の予定だとか、肝試しの予定だとかが書き込まれていた。ちなみに、僕は、
水着持ってないんだけど……」
それには、稚菜がすぐに答えてくれた。
「兄さんの奴貸してあげますから……」
「それは勘弁……」
それぐらいなら僕は自分で買うよ。
「暁美ちゃん! パフェ出来たよ!」
「ありがとう! 新宮のおっちゃん!」
僕は、そのおっちゃんの胸ぐらを右手で掴んで持ち上げた。周りは驚いている。
でも僕にとっては、こんな事は当然だ。その証拠に、部員で唯一ついてきている稚菜は俯いている。分かってくれているのだろう。
「先生……何やってるんですか!」
「五月蠅い!」
僕はその言葉に今まで学校の誰に掛けた言葉よりも強い憤慨の気持ちを込めた。すぐに綿貫さんはたじろぐ。
「……君は教師になったのか……結構なことだ。せいぜいあと二年、頑張るがいい」
「何だと……?」
僕だって元は七条の阿修羅と呼ばれた男、怒りの矛先は簡単には収めない。
「私の音楽は最高の芸術。人の極みとも言える生と死を具現化することに成功した。私は創造主にも、死神にもなれる」
「なにいってんだよ! この爺!」
僕は左手で憎き新宮の腹にボディーをたたき込む。当然、新宮は一撃でうめき声を上げた。
「……ヒントだよ。君があのライブに来て、最初に私のところへ来た人間だ。君だって、この人生をやり直したくはないのかい?」
急に口調が変わった新宮に、僕は戸惑った。
「君の周りにヒントはある。その全てを集めて、曲を作るんだ。そうすれば君は救われる」
「……救うも何も……僕はあんたがいなけりゃ普通の高校生として過ごしてるんだ!」
僕は感情を更に爆発させてしまった。周りの生徒達はどん引きしている。
「でも、私はそうだったら寂しいです」
急に稚菜が僕の後ろで口を開いた。
「だって、もしその人がいなかったら、私は馨と会えなかったんでしょ?」
馨だってさ~と綿貫さんとその他大勢が呑気にしゃべり出す。
「なら、私にとってはその人は人生の恩師です」
「でも僕は……」
そうやって揺れ動く僕の心に、彼女は楔を打ち込んでくれた。
「じゃあ、私が馨を普通の先生として過ごさせてあげます。それでいいですか?」
最後の言葉は、僕の顔をのぞき込んで、顔色をうかがうように付け加えた言葉だった。
ちょっと稚菜が意味を取り違えていたけれど、僕には気持ちだけで十分だった。
現実から逃れられないのに、違いはないから。


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さよならの旋律~七条の阿修羅~ [オリジナル]

一体何日更新しなかったんだろう……テストに追われ、眠気に追われ、本日一週間ぶりにまともに起きたままパソコンの前に向かいました。
眠さの余り、もっと後で出すはずだった主人公の設定が……その場しのぎで使われました。
この学校は、前後期制です。
今更気付いたのですけど、殆ど一話完結になってました。


僕は、学校の中で一番豪華な部屋の中にいた。
「一体今なんと?」
僕は聞き返した。その相手の校長は、平然とした顔で言う。
「だから、北条先生が産休に入ったから君に五組の担任をして貰いたいと言うことだよ。その間、体育の授業は私がやっておくから」
この平野高校の校長は、一部では有名な大人物だ。ボランティア活動などの慈善事業では日本でも指折りの知名度らしい。僕は知らないけれど。
そんな彼の徳にもかかわらず、人に頼み事をするときなのに外では雨が降っている。
梅雨というのは恐ろしい。
そして、この学校は驚くべき事に、授業をする先生が十六人しかいない。
昔小学校の時にあった、担任制という物。だから、全ての授業を一人でやらなければならない。教材は作られているから楽だけれど。
そのことで、気になることが一つある。
「……僕、学校の授業は高一の範囲までしか受けてないんですけど」
そう。僕は一般的な進学中高一貫校の中学の最後の授業……要するに、三角比が最後の授業だったというわけ。
そしてここ平野高校は、中高一貫。そして今は、高一の六月。当然、知らないことをやっているわけである。
「……仕方ない。君は、体育、世界史、古文、現代文をやってくれ。残りは私がやろう」
「……分かりました」
まあ、この四教科なら余裕だろう。と僕はとりあえず胸をなで下ろしました。
僕が了解したのを聞いて、校長は僕の入ってきた反対側のドアから出ていった。その先には校長専用の部屋がある。
僕は席を立ち上がって、校長が出た反対側のドアへ向かう。
ふと、立ち上がった席を見渡して、小さな喪失感に見舞われる。
それが嫌で、今立ち上がった椅子を蹴った。椅子は、何も抵抗することなく倒れた。
窓の外では、まだ雨が降り続いている。
梅雨の長雨は、僕の心に小さな染みを作った。それは自分でも気付かなかったけれど。



「座れ!」
僕は柄にもなく声を張り上げる。つい最近まで通学していた学校では、僕はただの真面目少年だった。学祭でも他のクラスメートのように女子の下に走りなどしなかったし、クラスで一位になっても喜びなどしなかった。
全てはいずれ終わるから。それを周りでは一番よく分かっていると思っていたから。
そして、今でも。
だから、キャラクターの破綻なんて大きな問題じゃない。
僕が言えば、ある一人を除いて全員座った。当然、今までこのクラスの授業を一教科でも受け持っていたのだから、この反応が返されることは分かっている。
「今日から僕が、体育と世界史と現国と古文を扱います。テキストは決まっているので、任せてください。これから今年の終わり頃まで、宜しく御願いします」
「……俺と同い年で、先公面するんじゃねえ!」
ああ、誰がこんな少年を育てたのか。僕は少年だから関係ない。親の顔と教師の顔を同時に見てみたい。
「ほら、何だ? 言い返せねえのか?」
僕はにこっと笑ってやる。後ろの方の席から、心配そうな視線が送られてきたので、心配ないと目線を返しておく。その視線の数は三本だった。そう言えば全員このクラスだった。
「……舐めてんじゃねえぞコラ!」
名前を思い出す。確かこいつは、有藤といったはず。有藤安弘。
まあ、京都にいた僕のことなんて、奈良の学生が知るはず無いのだけど。
こんな無駄なことを考えられるくらい余裕の僕にいらだったのか、有藤君が僕に殴りかかってきた。余りにも甘い。いきなり僕の顔面を狙っても、当てられるはずがない。覚悟が違うし、技量が違う。場数も、当然違うだろう。素直な奴からカツアゲしてるぐらいで調子に乗る不良というのは、本当に嫌いだ。ついでに退学させてやる。
僕はわざと相手の拳の上を叩き、僕の鳩尾に向かわせた。気付いたときにはもう遅く、威力のないパンチが、僕の鳩尾に収まっていた。かゆくもない。
「あーあ。お終いだね」
僕がこの教室に入ってから三言目は、退学勧告だった。
ついでに、せめてもの思いとして、病院に送ってあげることにした。
「一応、これでも教師なんだから、僕を殴ったらどうなるか、分かってるよね?」
一瞬で、有藤の顔から血の気が引いていく。やばいぞ有藤とか前の方に座る仲間が言った。こいつほど勇気もない。でも賢明。
「じゃあ、三本締めな」
僕は半年前のことを思い出す。人を殴るのは半年ぶりだから。
まず僕は左を鳩尾に入れる。その一撃で、有藤はその場にうずくまる。
僕は面白くなかった。やっぱり、前の学校のお隣さんとそっくりさんの方がやりがいがあった。もっと耐えてくれた。
仕方がなかったので僕は、握りしめていた右手の拳を解き、両手で肩を持ち上げて立たせてやった。その次の瞬間、彼の目に本能的な恐れが走る。
当然僕は、その時には行動を起こしていた。僕の右足の蹴りが中段に見事に入った。
不良学生達を幾度となく一撃で沈めてきた蹴りだ。当然のことかは分からないけれど、彼は二メートルぐらい横に飛んだ。それから倒れた。
「……二本になった。まあいいか」
僕を見る目が、三人を除いて恐怖の色に染まっている。
「……こいつを保健室に運んでくる。教科書読んで待っているように」
ここを理想郷だと思った僕が間違いだったみたいだ。



僕が帰ってきて授業を始めても、みんな恐怖におののいて授業になっていない。
僕は元々僕を知っていた校長から生徒指導として雇われたのだけど、人手不足で体育の担当になった。まあ学歴という物は全く悪くなかったので、父兄も納得してくれたのだけど。生徒指導及び体育教師としては。
このままでは父兄に伝わって、校長に迷惑がかかる……と思いながら僕は授業をしていた。
「えーと……武韋の禍を起こしたのは誰? 綿貫さん。答えて」
綿貫暁美。このクラスの女子のリーダーだよ、と川崎から聞いている。
「……先生。少し聞きたいことが」
「ん?」
僕は彼女が勇気を出して僕の武勇伝を聞いてくれる気になったのかと思って心躍らせた。本当は心躍らせてはいけないのだけれど。当然、心躍らせる内容でもなかった。
クラス全員の視線が綿貫さんに向く。彼女は、とんでもない爆弾を落としてくれた。
「先生って、本当に稚菜と……」
僕は素直だから、感情の起伏がすぐ顔に出てしまう。その時僕の顔は、真っ赤になったはずだ。救いを求めるように川崎の方を見れば、向こうは顔を赤らめながら僕に向かって微笑む。
「本人の口から聞かないと、信頼できませんから……」
しめたという風に、綿貫さんは僕にたたみかける。僕にもう抗う術はない。
そして、今更気付いた。クラス全員が拍手していること。そして、これの方がよっぽど父兄の耳に入ると危ないと言うこと。
僕は、二年後のことなんてその時は全て忘れていた。
「言うなーっ!」
僕はその時、確か必死で川崎の口を閉じさせていたような……気がする。
夏休みまで、あと一週間を切ったときの出来事。


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